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ある個人事業主の税務調査事案

  • 執筆者の写真: 山内裕司
    山内裕司
  • 5月29日
  • 読了時間: 3分

突然、国税局の複数人の職員が飲食店を経営する個人事業主の自宅に税務調査に来ました。


そして調査官から売上漏れを指摘され、「売上を少なく計上して申告しました。正しい売上金額が分かる書類はやましい気持ちもあったので捨てました。」との答弁をさせられ、その文章に間違いがない証明として署名・押印をさせられました。この文章を「質問応答書」といいます。


調査官から再三売上除外を認めて修正申告を提出するよう強要されましたが、とても納税できるような追徴税額ではなかったため提出をためらっていたところ、しびれを切らした国税局側はとうとう職権で更正決定してきました。


私はこの更正決定される少し前からこの事案に携わることになりました。


一般的には売上除外を認める質問応答書が証拠資料としてあれば当然重加算税が賦課されても致し方ないと思われる事案です。


が、私にはこれを覆す勝算があったため国税不服審判所に不服申し立てをして争うことにしました。


その根拠は

1.質問応答書の信ぴょう性を否認すること

2.売上除外を示す物的証拠がないことを明らかにすること


売上除外を認めているのになぜ質問応答書の信ぴょう性を否認することができるのか、という疑問はありませんか。


実は質問応答書というのは何度でも取り直し要求をすることができます。

質問応答書に署名・押印していたとしても、国税局側の誘導尋問や不安定な心理的状況で署名していたとしたらその信ぴょう性が疑われます。


国税不服審判所には次のように主張しました。

1.申告した売上は確かに少ないが故意に少なくしたわけではない。

  仕入れや経費の計上金額も少なく、売上だけを少なくしているわけではない。

  経理処理のずさんさを強調して故意に売上を少なくした点を否定した。

  そのほかにも質問応答書の受け答えに誤った記述が散見されたため、国税不服審判所はこ

  の質問応答書には信ぴょう性はないと判断しました。

2.国税局側は売上や仕入等の資料が全くないことを前提に仕入先へ反面調査し、同業他社の

  平均粗利をもとに売上を推計して否認額を積み上げました。重加算税を賦課するためには仮

  装あるいは隠ぺいの証拠を示す必要があるが、質問応答書のみに頼った国税局側はそれを

  怠っていた。国税不服審判所も同様の判断でした。


この2つの主張が認められたことにより重加算税の取り消しを勝ち取ることができました。


調査の現場ではこの事案のように物的証拠もなく質問応答書のみで重加算税を賦課してくる事案はたくさんあります。


国税職員は売上漏れ=不正=重加算税で押してこようとします。納税者はもちろんのこと税理士もそれに異議を唱えることは少ないです。


今後は、売上漏れ≠不正≠重加算税のケースを念頭に税務調査に臨んでください。





 
 
 

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