令和2年4月30日に「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」が成立、同日施行されました。
以下、その内容を紹介します。
1.納税の猶予制度の特例
今年の確定申告の所得税や来年1月31日までに納期限が到来する法人税等について、
① 令和2年2月以降の収入がおおむね20%以上減少して、
②一時に納付することができない場合、
申請により納期限から1年間、納税の猶予が認められます。
猶予期間中の延滞税は免除され、担保の提供も不要です。
2.欠損金の繰戻しによる還付の特例
欠損金の組戻しとは、今年度欠損金が生じた場合、前年度黒字で納税した法人税から還付を
受けることができる制度。
今まで、資本金1億円以下の法人にしか適用されなかった制度ですが、資本金1億円超10億円
以下の法人に対しても、令和2年2月1日から令和4年1月31日の間に終了する事業年度に生じ
た青色欠損金について、欠損金の組戻しによる還付制度が拡充されました。
3.テレワーク等のために中小企業の設備投資税制
中小企業経営強化税制について、特定経営力向上設備の対象に、業務のデジタル化(テレワ
ーク等)を促進するために、遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする投資計
画に記載された設備が加えられました。
中小企業経営強化税制とは、中小企業経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づ
き、一定の設備を取得や制作等した場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資
本金3000万円超1億円以下の法人は7%)が選択適用できるもの。
4.文化芸術・スポーツイベントを中止等した主催者に対する払戻請求権を放棄した観客等への寄付金控除の適用
新型コロナウイルス感染症に関する政府の自粛要請を受けて、ファンの間に感染が広がる最
悪の事態を避けるため、それまで全力で進めてきた準備をすべて投げうち、苦渋の決断で開
催を中止等した文化芸術・スポーツイベントが数多くあります。
中止等された文化芸術・スポーツイベントについて、チケットの払戻しを受けない(放棄する)こ
とを選択された方は、その金額分を「寄附」と見なし、税優遇(寄付金控除)を受けられる新た
な制度を創設しました。
手続きとしては、主催者に払戻しを受けないことを連絡し、主催者から「指定行事証明書」と
「払戻請求権放棄証明書」の2つの証明書を入手のうえ、確定申告すること。
(優遇内容のイメージ)
10000円のチケット代金を放棄
(10000円 - 2000円)×40%=4000円の減税
5.住宅ローン控除の適用要件の弾力化
①中古住宅を取得した際の住宅ローン減税の入居期限要件(取得の日から6か月以内)につ
いて、取得後に行った増改築工事等が新型コロナウイルス感染症の影響で遅れたことによ
り入居が遅れた場合でも、一定の期日までに増改築等の契約を行っている等の要件を満
たしていれば、入居期限を「増改築等完了の日から6か月以内」とする。
②新築住宅ローン減税の控除期間13年間の特例措置について、新型コロナウイルス感染症
の影響により入居が期限(令和2年12月31日)に遅れた場合でも、一定の期日までに住宅
取得契約を行っている等の要件を満たしていれば、特例措置の対象とする。
6.消費税の課税選択の変更に係る特例について
消費税の課税事業者を選択する場合の届出書は、課税期間開始前までに提出する必要があり
ますが、新型コロナウイルス感染症等の影響により、
①令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間のうち任意の1か月以上の期間の事業としての
収入が、著しく減少(前年同月比概ね50%以上)している場合、
②課税期間開始後であっても、課税事業者を選択(又はやめる)ことができます。
(私見)
例えば、基準期間(2年前)の課税売上高が1000万円以下の事業者は、もともと納税義務はあ
りませんが、課税事業者を選択することによって、新型コロナウイルス感染症の影響で減少し
た課税売上から課税仕入を控除すると還付される可能性があります。
③簡易課税制度の適用についても、新型コロナウイルス感染症等の影響により、その適用を受
ける(又はやめる)必要が生じた場合、その被害を受けた課税期間からその適用を受ける(又
はやめる)ことができます。
(私見)
簡易課税から一般課税に切り替えることによって、還付を受けることが可能です。
7.特別貸付けに係る契約書の印紙税の非課税
公的金融機関や民間金融機関等が、新型コロナウイルス感染症によりその経営に影響を受け
た事業者に対して行う金銭の特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書について、印紙税を
非課税とすることとされました。
なお、既に印紙税を納付している場合には、「紙税過誤納確認申請書」を税務署に提出する
ことによって、還付を受けることができます。
8.地方税関係
地方税の主な改正を紹介します。
①徴収の猶予制度の特例
②固定資産税の軽減措置
売上高が30%以上50%未満減少 → 2分の1
売上高が50%以上減少 → ゼロ
③自動車税・軽自動車税環境性能割の臨時的軽減の延長
自動車税・軽自動車税環境性能割の税率を1%分軽減する特例措置の適用期限を6月延
長し、令和3年3月31日までに取得したものを対象とする。
9.社会保険料関係
新型コロナウイルス感染症の影響により、
①令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べ
て概ね20%以上減少しており、
②厚生年金保険料等を一時に納付することが困難である場合、
③厚生年金保険料等の納付を1年間猶予する。
④担保の提供は不要、延滞金もかかりません。
①労働保険料については、年度更新期間を令和2年8月31日まで延長すること、
②新型コロナウイルス感染症の影響により、事業に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以
上減少しており、
③労働保険料等を一時に納付することが困難である場合、
④労働保険料等の納付を1年間猶予する。
③担保の提供は不要、延滞金もかかりません。
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